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第13回自由律俳句フォーラム
日時: 2014/03/19 14:10
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

開催のお知らせ
今回は句会を中心に開催いたします。投句は、@ 雑詠句一句、A テーマ句一句、二句一組とします。
テーマは「春の風」です。
投句頂いた句を投句者全員で選をし、雑詠句一位には大賞としてクオカードと記念品、テーマ句上位三句と雑詠句二・三位にはクオカードを贈呈いたします。
奮っての投句と近隣の方は自由闊達な意見の交換で会を盛り上げるためにも、当日会場への参加を是非よろしくお願い申し上げます。

1 , 日 時 平成2 6 年5 月2 5 日(日) 午後1 時より5 時まで
※ 会場には2 0 分前までにご参集下さい。

2 , 会 場 江東区 芭蕉記念館・第一会議室
〒1 3 5 − 0 0 0 6 東京都江東区常盤1 − 6 − 3
電話0 3 − 3 6 3 1 ‐ 1 4 4 8
地下鉄都営大江戸線 森下駅A1 出口より徒歩7 分
東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅清澄通り改札A1 出
口徒歩1 0 分

3 , 参加費 1,000円( 資料代含む)

4 , 出句料 1,000円― 2 句1 組で未発表のもの( 公平を期するために大会当日まで句会や他所での発表はお慎み下さい)
※ 出句のみの方は1 .000 円を郵便振替口座00170 -6 -38652 海紅社宛ご送金下さい。後日大会内容を小誌に纏めお送りします。
※ 当日参加される方は合計2.000 円( 出句無しで参加だけの方は1.000 円)を会場でも精算出来ます。

5 , 応募要項 官製葉書に下記要領で@ 〜 D までご記入下さい。
( 同様式にてメール・FAX も可。t ada to8008@ni f t y. com アドレスへ)
自由律俳句フォーラム申し込みとお書きになり、
@ 氏名(所属会名)
A 〒住所
  電話番号
B 投句二句
C 当日の 出・欠 (どちらかお書き下さい)
D 懇親会 出・欠 (どちらかお書き下さい)
※ 懇親会は会の終了後、引き続き同所で行います。( 費用1.500 円)

6 , 送付先 〒154 -0012 東京都世田谷区駒沢2 − 2 8 − 1 4 海紅社」中塚唯人宛
電話・FAX: 03- 34 22-6962
( メールの場合はt ada to8008@ni f ty. com アドレスへ)

7 , 締切 平成2 6 年3 月3 1 日( 期限厳守でお願いします。)

8 , 主催 東京自由律俳句会
プロデュース: 小笠原玉虫& 梶原由紀
( 今回は若手女性二人が進行を勤めますのでご支援の程、宜しくお願い致します。)
メンテ

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第13回自由律俳句フォーラム ( No.1 )
日時: 2014/11/14 17:53
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

◆参加者名簿
(アイウエオ順、○印は当日参加者です)
安達千栄子(海紅「阿良野句会」)
渥美ゆかり(海紅「阿良野句会」)
〇安門優(「ぎんなん」)
〇伊藤郁子(海紅「青空句会」)
岩谷照子(海紅「しらさぎ句会」)
大西節(海紅「赤壺詩社」)
岡捷代(「ぎんなん」「エトレ」「茉莉花」他)
〇小笠原玉虫(「海紅」「鉄塊」・「ア・ぽろん」)
荻島架人(「ぎんなん」)
折原義司(海紅「かみなり社」)
〇梶原由紀(海紅「海紅社句会」)
上塚功子(海紅「しらさぎ句会」)
鬼頭富子(「萌句会」)
黒瀬文子(「天街」「しらゆり句会」)
小山君子(海紅「かみなり社」)
小山智庸(海紅「かみなり社」)
紺良造(海紅「かも川吟社」「青い地球」)
〇斉藤実(「層雲」・「ぎんなん」)
○佐瀬広隆(「層雲」・「ぎんなん」)
さはらこあめ(「草原」)
島田茶々(「層雲」・「ぎんなん」」
○白松いちろう(「群妙」・「ぎんなん」)
菅原瓔子(海紅・秋田)
鈴木和枝(さんしょ)
○そねだゆ(「草原」・「ぎんなん」)
高橋登紀夫(海紅「かも川吟社」)
○田中耕司(海紅「海紅社句会」)
ちばつゆこ(「エトレ会」・「井月会」)
〇寺田和可(「群妙」)
○中塚唯人(海紅「海紅社句会」)
〇夏石番矢(「世界俳句協会」「吟遊」)
南家歌也子(「層雲」・「ぎんなん」「エトレ」他)
〇野田麻由可
〇野呂郁哉(「ぎんなん」)
原さつき(「萌句会」)
原鈴子(海紅「赤壺詩社」)
○平岡久美子(「ぎんなん」「ロマネコンテ」))
〇藤井雪兎(「鉄塊」)
風呂山洋三(海紅・宮城)
- 2 -
正木土昜(海紅・四日市)
増渕コク(海紅「かみなり社」)
松尾尚子(層雲「松の会」)
松岡月虹舎(「層雲自由律」・「でんでん虫の会」)
三島当美子(「萌句会」)
宮地祥子(「萌句会」)
〇村本さと子
森命(海紅・岐阜)
〇湯原幸三(海紅「海紅社句会」)
吉川通子(海紅・長野」)
吉田數江(「萌句会」)
○吉多紀彦(「ぎんなん」)
吉原陽子(「萌句会」
〇ラウル・クリエール(メキシコ)
若木はるか(海紅・山形)



◆はじめに◆ 中塚唯人
今回は投句者名、当日出席者名の方のご協力をいただきました。心から御礼申し上げます。世界俳句協会から夏石番矢氏をゲストにお招きし、またメキシコ大使館ご勤務の方の飛び入り参加もあり、さながら国際俳句フォーラムの雰囲気も加わって、いつも以上に活気ある会となりました。
会は小笠原玉虫さん・梶原由紀さんの若い女性二人が進行を受け持ち、湯原幸三君の司会で前半は皆様から投句頂いた「雑詠句」について玉虫さんが披講、後半戦は由紀さんが「テーマ句―春の風」を披講する二部構成で開催されました。
句会は頂いた投句をあらかじめ投句者全員で互選し、その結果と皆様から頂いた寸評をもとに執り行いました。
まずは皆さんからいただいた句を詠草集として纏めましたので句を鑑賞下さい。
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム 選句結果 ( No.2 )
日時: 2014/11/26 16:20
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

「雑詠句部門」
○は得点数、その後ろは順位
1D 白の色鉛筆落ちている長い階段    藤井雪兎
2D 白いタマシイ舞い狂う菜の花畑知覧  いまきいれ尚夫
3I7悩んだままでも雨はあがった     小笠原玉虫
4A 頭が骨粗鬆症もう長くはない     島田茶々
5E 舌を抜かれ損なって今        白松いちろう
6C 雪解けの塵あらう雨となる      吉川通子
7B 体重計にあがる風のような軽さの春  菅原瓔子
8F 寝転んだスマホに春の雲が流れる   ちばつゆこ
9E 寝袋の中は若者でしょう花見陣取る  上塚功子
10N2少女去り足あとにさくら貝      梶原由紀
11J5春よ私の中に入って来い       若木はるか
12A 散り始めたむらさきもくれんリバーシブル 田中耕司
13B 桜咲いたか人生はじめました     湯原幸三
14G10 砂のうえに海がある砂のうえにたつ  さはらこあめ
15D骨箱ぶら下げて大都会を乗り継ぐ    平岡久美子
16C 行き暮れて古稀さえ遠いうしろ    吉多紀彦
17B 公会堂はビートせつなくタイムマシーン 松岡月虹舎
18M4胸のつかえとれていく春の渚      吉田數江
19H9寒い丘ひとつ越えわが家の灯り    風呂山洋三
20B 花日記あてのないページ       原鈴子
21A 屋根で雀春の光りと遊んでいる    佐瀬広隆
22◎ 雨あがり三千世界に響け小鳥たち   正木土昜
23I7笑うあなたに月の額縁        荻島架人
24D メモ選り分ける過去と未来と     そねだゆ
25A みんな働いているひとり散歩     野呂郁哉
26A 待たれて咲く梅心の中のありったけ  森命
27G10古書店で背中合わせのじいじとばあば 岡捷代
28D 古里は何もなく赤い鳥居もビルの上  斉藤実
29C 歯をくいしばるくせのつき山椒の芽  南家歌也子
30E 春の鼓動船ポンポンと湖の道     渥美ゆかり
31F 春がいっぱい欲しいふかーい溜息   鬼頭富子
32E 墓参りいぬふぐり空の色       岩谷照子
33D ねこやなぎ銀色に輝るわたしの発光体 宮地祥子
34B 入園児と母藤棚の下の日だまり    小山君子
35◎ 椿一輪から二輪真っ赤八分咲きに   折原義司
36M3つくし小競り合い土が笑っている   大西節
37C 近ごろ桜までも西洋かぶれしている  安達千栄子
38F タイショクという職を得た日の桜と青い空 中塚唯人
39J5座れば温かい鈍行の指示に従う    鈴木和枝
40C 失恋は赤い実を食べる鳥の真下    野田麻由可
41A 好日好天蘖の桜一輪(自祝)     都丸ゆきお
42B 鰈の身をはがす無口な北の人     小山智庸
43B 殻を脱いでたおやかに生けたい女の壺 吉原陽子
4423大賞 がま口パチンと音たてて幸せ足りている 松尾尚子
45B オフィスの四角い空に虹が見え    原さつき
46◎ 居並ぶ土偶に迎えられた岡倉天心絵画展 増渕コク
47D あいまいな記憶の底で朝は納豆飯食い  高橋登紀夫
48E 青蛙お前はやはり人間不信か      黒瀬文子

「テーマ句‐春の風」
○は得点数、その後ろは順位
1F10名刺を読み上げている春の風      梶原由紀
2M4麻痺の手でしっかり掴む春の風      平岡久美子
3◎ 風にとろり甘い春の一声         佐瀬広隆
4@ 飛行機雲西に延び黄砂に消える      原鈴子
5A 薄紅桜が風を起こし芭蕉の唇を      白松いちろう
6C 人生の苦味をかき混ぜる珈琲に春風    菅原瓔子
7○32大賞 春風のめくったページから読む   藤井雪兎
8A 春風スイと吹き何でも許せてしまう    ちばつゆこ
9R2春の風優しいだけでいればよかった    正木土昜
10A 春の風に夫のくしゃみ三連発      吉川通子
11A 春の風に吹かれ襟を正す        風呂山洋三
12@ 酒くさい風が舞う上野公園まさに春   湯原幸三
13A 錆付いた青春が風にきしむ音わたしの春 吉多紀彦
14F10桜散る道の生きている人たち      さはらこあめ
15D 咲いた菜の花に被災地の芋虫青虫    松岡月虹舎
16D 月曜日春の風は昼下がりのジャズ    野呂郁哉
17@ 花見酒と花散らす春風の言い訳     いまきいれ尚夫
18C 花見する犬の背にも桜ふぶき      島田茶々
19D 花の色付けひとつも違わず春風怪し   上塚功子
20E ゆきやなぎゆらゆらよわいみなみにかわった 田中耕司
21E 窓から蝶が、ちんちん電車に春の風   斉藤実
22A 彼岸には菜の花ろうそくと共にゆれ   森命
23A 彼岸会土手の菜の花やさしくゆらす   都丸ゆきお
24F10春の風幼児泣かずに赤い風船      小山君子
25D 春の風ふいて壇蜜のふる里である    高橋登紀夫
26I6春の風にくれてやる嘘も方便      吉田數江
27F10春の風手話の指たおやかに幕明ける   宮地祥子
28E 春の風今あなたのためだけに生きる   南家歌也子
29B 春風の果てよ私の手のひらへ      野田麻由可
30◎ 春風にゆらゆら柳芽吹く        増渕コク
31◎ 春風思いきり吹いて私のモヤモヤ吹きとばせ 安達千栄子
32F10ばらばらに飛ばされちゃうんだ春の風  若木はるか
33H7腹の足しにはならないがサクラサク    鈴木和枝
34F10ハナニラの花が僕の鼻歌にゆれている  中塚唯人
35H7つぼみ破って少女はピンクのルージュ   そねだゆ
36M3接ぎ木して支え合う余生の風光る     吉原陽子
37C そのうなじ春風までがキスをする     原さつき
38F10増税前の春の風も買い込んでおく    松尾尚子
39G9スカーフを若草色に染め春の風      岡捷代
40E さくら咲きましたやさしい風も吹いて下さい 渥美ゆかり
41A 黄色い花咲かす元気な風吹く       折原義司
42◎ 会館にピンポン弾む春の風        岩谷照子
43F オーノースカートもぐる春一番      鬼頭富子
44A 裏口をあける犬ふぐりそっと春の風    大西節
45@ あるじ亡き家に春の風通す掃き浄める   小笠原玉虫
46H 赤提灯ぶらりぶらりと春の風       小山智庸
47C あいたい花を咲かす春の風        荻島架人
48B 一面の菜の花を被う緋の嵐        黒瀬文子
49J5新婚の荷を展く座敷に春の風ひかり    紺良造
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム 評 ( No.3 )
日時: 2014/11/26 16:23
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

【フォーラムレポート】湯原幸三
平成二十六年五月二十五日、江東区の芭蕉記念館会議室にて、第十三回東京自由律俳句フォーラムが開催されました。
今回のプロデューサーは小笠原玉虫さんと梶原由紀さんのおふたりです。第一部を雑詠句、第二部をテーマ句と分け、句会を行いました。
事前に集まった投句数は合計句。初参加の方々、ゲストの夏石番矢さん(世界俳句協会)とともにロの字型に配した机を囲み、会は十三時にスタートしました。
まず、前回のプロデューサー中塚唯人さんの開会宣言。次に初参加の寺田和可さん、野田麻由可さん、野呂郁哉さん、藤井雪兎さんの自己紹介。夏石番矢さんからもご挨拶いただいたところで、メインイベントの句会へ進みます。

句会第一部は小笠原玉虫さんの進行で、雑詠句の句会。投句数四十八句。いつも通り互選した結果の得点が記された詠草集を元に、高得点の作品から句評し合いました。

【雑詠句・句会より】                   披講  小笠原玉虫
(録音から掘り起こし、発言者のわかる方は極力お名前を入れました。読まれる方も一緒に、ここは違うんじゃないとかライブ的雰囲気をお楽しみ下さい)
大 賞
   がま口パチンと音たてて幸せ足りている  浜 松  松尾 尚子
平岡「財布は束入れなんて言われるように、一万円札がどっさり入るのがある。しかしこのがま口パチンは、日常に事足りているという感じが軽やかに表出されている」
吉多「『がま口パチン』が歯切れがよい。この音に幸せを感じる日常。本当の幸せはこんなところにあるのですね。『幸せ足りている』なんとつつましくさわやかな表現でしょう。」
 23点を獲得しダントツの一位でした。

二 位
   少女去り足あとにさくら貝        東 京  梶原 由紀
唯人「これはいいですね。ずっと前に耕司氏と、砂浜で波が足の下の砂を持っていく、あの感じを句にしたいって話してたことあるんだけど、これはうまいなと思いました。」
ゆ「これベッドの上でもいいよね(笑)」
唯「でも桜貝ときたら浜辺だろうなぁ」
ゆ「桜貝そのものじゃなく、桜貝のような色のものが残ってるともとれるじゃない」
「まぁそれを言ってしまえば、色とか広がりも見えてきそうだけどさぁ」
「でもこれは海ではなくベッドのような場所とするには情報がないよね」
「どうしたってこれは海です」
「でもこれは浜辺じゃないかもしれないって鑑賞した人もいるっていうのは凄いね。来た甲斐があったね」
「詠み人は私の娘と同じ年頃のかたかなって思ったんですが、ただ桜貝のイメージが繊細なので、純粋なものが投影されているなって思いました。」

三 位
   つくし小競り合い土が笑っている     香川  大西 節
野田「ちょっと向かいの風景で、可愛らしくて、土が笑っているっていうのが面白いなと思いました」
白松「つくしと春で僕もいくつか作ったんですが、なかなかこういうふうに土が笑ってるというのは言えないと思いました」
湯原「今回いくつか選んだ中で、一番最初にとったのがこちらの句で、春でつくしって、ほかのかたは古い句だと思うのかもしれな いですけど、やっぱり僕は土が笑っているが新鮮に感じました。笑っているっていうのがすごい優しくて、ゆっくり時間が流れてきて春にふさわしいなと」
ゆ「定型で『山笑う』っていうのがあるじゃない、あれと関連があるのかなと思いました。土手が笑っているというような」
斎藤「私も特選で頂きました。私は山笑うとかじゃなくて、つくしと土が動いて、笑ってってとりました」
玉虫「私はこれはとても寒い土地、春が来てとても嬉しい土地なんじゃないかなと思いました。」
唯「これ作ったかたは、香川の八十いくつのおばあちゃんなんだよね。そういうかたがね、こういう瑞々しい句を作るのはね、凄いなと思いましてね」
「このかた、前回の句もよく覚えてるんだけど、こんな風にね、八十いくつで可愛らしくて、瑞々しくて、こういう句を作るって凄くいいなと思うんですよね」
「小競り合いってのがまた面白いですよね」
「小競り合いだから笑うが生きるんだね」
唯「若い人たちはどうなのよ(笑)」
藤井「(笑) 小競り合い、笑う、と擬人法の連続ですよね。これ個人的な好みなんですけど、擬人法あんまり好きじゃないんですよ。でも春の喜ばしい感じが出てるし、情景も目に浮かぶし、いいと思います。はい」
梶原「これちょっと疑問がありまして。小競り合いって風が吹いてつくしの頭の部分がぶつかり合うことかなと思いまして、それから土が笑っている、と、地面に視線が移る。この視線の移動にちょっと戸惑いましたね」
「こちら、詠み人はお年を召したかただなとすぐ分かりました。小競り合いする程のつくし、最近ではほとんど見つけられないですよね。だからこういう光景を経験した方だなと。それは、経験した者は分かるけれど、若い方にはどうなんだろうと思いました」
藤井「いや、僕は田舎で食べましたし、普通にこういう光景経験ありますよ」
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム テーマ句評 ( No.4 )
日時: 2014/11/26 16:26
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

第二部はテーマ句の句会で、進行役は梶原由紀さん。テーマは「春の風」。投句数四十九句。

一位 春風のめくったページから読む  藤井雪兎
二位 春の風優しいだけでいればよかった  正木土昜
三位 接ぎ木して支え合う余生の風光る  吉原陽子

どちらの部も上位三句の作者にはクオカードが贈られ、雑詠句の一位が「大賞」となります。他にもゲストの夏石番矢さんから小笠原玉虫さんに特別賞が贈られました。

本会終了後の懇親会でも「箸袋句会」と題した即吟の句会を行い、小笠原さんと梶原さんはこちらの進行でも大活躍。
食事をし、お酒を飲みながら、作者を明かさずに読み上げられた句について遠慮なしに意見を言い合う懇親会もまた、本句会の延長戦として盛り上がりました。

通常であれば秋に勉強会を中心としたフォーラムを行いますが、今年の十月には東京で「自
由律句のひろば」が主催する全国自由律句大会が開催されるので、そちらに当会も協力することとし、秋の自由律俳句フォーラムは中止となりました。
次回のフォーラムは来年五月を予定しています。

【雑詠句・句会より】                   披 講  小笠原玉虫
(録音から掘り起こし、発言者のわかる方は極力お名前を入れました。読まれる方も一緒に、ここは違うんじゃないとかライブ的雰囲気をお楽しみ下さい)

四位
   胸のつかえとれていく春の渚     吉田 數江
 会場に来ている方で取ったのは湯原さん一人。
湯原「春になって凍っているものが溶けていくような光景がいいなと思ってとりました。冬の間は凍ってて冷たくて痛いくらいの光景だったんだろうなと。でも春になって、辛いことなども、和らいでいったのかなと。そういうのがいいなと思ってとりました」
ゆ「こちら、詠んだかたはシャキシャキしたお母さんて感じの方。春の海のたりのたりというのもあるように、ゆったりしてるじゃないですか。それで、今まで人生で苦労なんかもあったのが、きっと穏やかになったんだろうなと思いますね」
田中「俺は春が平凡すぎてとらなかったね」ゆ「春って出さない方がいいよね」
「私もとらなかったのはさ、『胸のつかえとれていく春の渚』じゃね、ほんとにああそうですか、そうだよねーって感じすぎちゃってね」
田中「だから春ってのをさ、別の言葉を使うとかね。これ春って平凡じゃない?こんなこと言ったら悪いかもだけどさぁ」
ゆ「僕も同感」
田中「これじゃあまりにも当たり前すぎるんだよね」
藤井「これ『胸のつかえとれていく』っていうのは読んだ人が判断することであって、作者がいうことじゃないよね」
夏石「先程お話がありましたが、わたくしには冬から春へ、っていうふうには読み取れなかった。春になんてなったらますます悩みの中へ入ってめんどくさいことになるんじゃないかなと」
ゆ「もう若い人じゃないんだから(笑) 年取ったら落ち着かなきゃ(笑)」
「やっぱり年齢を感じますね」
唯「その昔、定型の今井聖氏の街句会とコラボ句会をやったときに、何故彼が自由律と句会をやりたかったかというと、自由律の革新性がほしいって言ったわけでね。彼は定型の中にも、そういうものを取り入れたいと思っていたんで、まぁこの句を見せたら、彼はつまんない、自由律をやっている中での価値観を見出せないって言うんじゃないかなってね。だから、自由律っていうのは、五七五の型っていうのからは解き放たれてるけど、やってることは一緒だなっていうようなね。悪いっていうんじゃなくてね、うーん、もうちょっと、こういう句が上位に来るならば若い人には、頑張ってほしいなっていうところでしょうね、やっぱり。もちろんいい句であることにはまったく異論はありません」
夏石「有季定型の人でもね、春の海ならもうちょっと違う素地を持ってくるんじゃないかな。自由律って歴史みてると口語自由詩の流れを井泉水さんたちが取り入れてて、割合飛躍のない口語自由詩の流れが自由律にもあって、そこがやっぱり物足りないかもしれませんね」
「このかた知ってるんですけれども、本も送っていただきまして、斬新な句もたくさん詠まれているかたです。彼女にしては落ち着き払っていますね」
ゆ「らしくないよね」
「そう、らしくない」
唯「じゃ、なんでこれだけの人が支持したんだろね。まぁとった人がここにいないんで賛成の弁が聞けないのが片手落ちだけど。」
「とったのはきっと年配のかただよね」
唯「このとっている人たちの句風ってのを見てみると、どちらかというとこういう調子だね。好みだね、こういうのがね。」
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム テーマ句評 ( No.5 )
日時: 2014/11/26 16:28
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

五位
   春よ私の中に入って来い     若木はるか
玉「こちらは会場にいらっしゃるかた半分以上がとってますね。藤井さんいかがですか」
藤井「こういう風に思ったことが、私は一回もないんですね。春を飲み込む、そういうことよく思いついたなと。純粋に驚いたので特選にしました」
ゆ「深呼吸する時さ、春になったなと思いながら深呼吸するじゃない。あれですよこれ」
藤井「ああ。でも、春そのものをこう、入ってこーいって感じで?」
ゆ「春の風とか空気って書くよりも、春って抽象化した方が、全て、うきうきするようなものも含めて深呼吸で、ってことで」
藤井「なるほど。ただね、私は春!ってそのものを、ダイレクトに入ってこいという、こういうアプローチもあるんだなと思ってビックリしました」
田中「これはね、最後に『来い』って言ったのがいいんだよ。来いっていうね、命令っていうかね、自分の方が強気になってるのがいいんだな。これが来てほしいって恰好にするとぐじゅじゅぐになっちゃうんだよね。これはカッコよく出来たなと思って。」
平岡「私も同じで、表現の仕方で、自由律で、しかも口語で、これだけ表せるってスッキリしてていいなって」
藤井「たださっきそねださん言われたように、春の風とか春の匂いだったら俺はとらなかったと思います」
「こういうかたちで表そうとした時、俳句ってかたちではなかなか出せないですよね。だから凄いな、冒険してるなって思います」
唯「上手い句を作ろうと勉強して、頭の中にいろいろごちゃごちゃ考えちゃうと、それを一句として作ろうとすると、もう詰まっちゃう訳だね。苦しくなっちゃう。勉強することは悪いことじゃないけど、勉強して苦しんで掴むこともあるけど、もうスパーンと真っ裸になってやっちゃえよ、って言ったらこれが出来た訳だね。まぁでも、悩みながらやるしかないよね」
夏石「私はこれは成功していると思いますね。田中さんがおっしゃったのかな、最後の『来い』で音があがるし強くなる。これは音としてもいいんですよね。春よの部分は、いろんなものが詰まってるんだけど、大掴みにして成功してますよね。春よ来いっての
はたくさんあるけど、ここに『私の中に』が入ってくると全然ちがってくる。これは言葉の不思議ですね」
「僕は皆さんがおっしゃったようではなくて、非常に観念的な句って感じで、これはやっぱりネックになってないかと思います」
夏石「春っていうのは旧暦では正月辺りからで、だから寒いなりにもある種のめでたさがなければならないってのは和歌の時代からあるんですが、本来春ってもっと不安定なものですよね。だから不安定さをめでたい方へ持っていきたいということが詩歌の流れの中にはあるんですよね。これ、観念的って見方もあるし、逆の見方もある。これ皆さんどう思われますか」
玉「これ、私はとらなかったんですけど、藤井さんはこの見方が自分の中になかったので面白かったっておっしゃったんですけど、私は逆に分かりすぎたので、すっと入ってそうだよねで通り過ぎちゃいました」

五位
   座れば温かい鈍行の指示に従う     鈴木 和枝
ゆ「新幹線や急行に乗ることが多いんですけど、鈍行に乗るってことは地方なんですね。そこにおいて自分はエトランジェであり、社内アナウンスに従うってことなんだろうけど、深読みしちゃうと、人生でもやっぱり鈍行に乗る時は、謙虚になって言うことを聞くと。奥さんのいうことをね」
吉多「我々の年代は、何時までに着かなきゃならないみたいな時間に追われる生活から解放されて、ホームに急行と鈍行が両方止まってたりすると、鈍行だったら座って行けたりするんですよ。で、乗ってね、途中急行が追い越していく社内アナウンスがあってね。遅いってことのね、あたたかさに共感したんだねこれは」
「座れば温かい鈍行の、までは賛成だけど指示に従う、が、言葉として固すぎるというか。もうちょっと別の言葉はなかったか。生煮えなんじゃないかと思ってとりませんでした」
玉「確かに『指示に従う』って業務っぽいですね」
藤井「『指示に従う』は説明しちゃってますね」
「鈍行の」までは賛成多数。皆さん「指示に従う」が引っ掛かっている様子。
「私も指示に従うが引っ掛かってとらなかったんですけど、皆さんの意見を今聞いていたら、逆に面白いような気がしてきました」
ゆ「いやーでもこれはやっぱり面白いんだと思うんですよ。たまには破ってみるのも必要というか」
由紀「『指示に』をとって『鈍行に従う』にしたら面白いかなと思いました」
ゆ「梶原さんの言う通りだね」
玉「うーん、それは面白いですね。」
田中「そもそもあれ指示じゃないよね、アナウンスはただのお知らせだよね。指示なんてないのが鈍行のいいとこだしね」
ゆ「やっぱり梶原さん説がいいね」
藤井「どの言葉を削ろうとか、削ったら分かんなくなるんじゃないかとか、自由律のそういうところは難しいですよね」
唯「どうしても分かってほしくて言っちゃうとつまんなくなっちゃったりね」
玉「私もいつも鉄塊で言われてるんですよ、『説明しすぎって……」「(笑)」で、短くすると『投げっぱなし!』って……」「(笑)」
(来月はベストテン残り5句を、その後、テーマ句部門、気になった句など連載します。なお、秋のフォーラムは「第三回全国自由律句大会」に東京自由律俳句会も協力するため来年の春までお休みです。)
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム テーマ句評 ( No.6 )
日時: 2014/11/26 16:30
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

七位
悩んだままでも雨はあがった  小笠原玉虫
玉「オレだ!!」
会場「オレって言った!(笑)」
玉「ドヤァッ!」
白松「全くこのままの、素直な詠み人だと思ったんですが、悩んでも悩まなくても雨はあがったんですよねきっと。悩んでるのに雨は上がっちゃったんですよね。ずーっと降ってりゃいいのに、と。このかたの悩みって一体なんだったのかなと思いました。聞きたい(笑)。それはともかく、逆説的なところが面白いと思いました」
藤井「最初見たとき自分の句かと思いました。作風が似てたんで(笑)。先程の春よ〜とどっち特選にしようか迷ったくらいです。これ、悩んでるのは人間で、雨があがったの方は自然で、自然は人間がどう思おうがおかまいなしで、勝手に進んでいくっていうのが面白かったんでとりましたね」
玉「藤井さんは鉄塊で一緒なんですけど、私の句が嫌いなんですね(笑)。絶対とってくれない。私のだって言わずに見せると「んー!」とか言ってものすごく嫌な顔をするんですね。で、絶対とってくれない。だから今回は非常に珍しいことです。嬉しいです」
藤井「何で今回とったかというと、自然なんですね。すっと入ってきた。そういう句が自分の理想なので」
佐瀬「これはまだ悩んだままだと思うんですね。恨みとかね。そういう気持ちがね、いいなと思ってね」
野呂「すらっと読めるんですね。すらーっと通り過ぎて、とらない可能性もあるんだけど、やっぱり素直でいいなってね」
ゆ「この句を特選でとってるさはらさんはね、電車で通勤してて電車の句が多いんだけど、
通じるところがあったのかな」
唯「この句では珍しくね、『も』っていう言葉は非常に難しいんだけど、効いてるんだよね。『も』があることによって、悩んでいようがいまいが雨はあがっちゃうよって意味になる。非常に効いてる。まぁ詠んだ本人は分かってないんだろうけど」「(笑)」
藤井「雨があがるってポジティブな感じですけど、この句はポジティブなのかネガティブなのか、どっちつかずなところが俺は好きで、これはどっちなんですか?」
玉「これはですね、悩みはそのままなんだけど雨はあがったし、まぁ何とかなるんじゃない?っていう呑気なほうです」
「あがった、なのだから、からっとしてそのうち悩みも晴れるのだろうって思う」
夏石「日本語って難しくて、あがったって過去形みたいであり現在形でもあるんですね。でも、あがった、て音がきっぱりしてるのがいいね。それとやっぱり『も』が効いてると
思う。これ無意識でやったんならなかなかだね」
藤井「句意が解釈によって真っ二つに分かれる句ですね」
玉「句意は確かに伝わりにくかったかも……」
田中「これは読み手に投げっぱなしになる句だね。ちがうほうの解釈をされても、ちがいますってきっぱりと言い切れない句だ。それがダメってわけじゃないけど、自分はどういうつもりで投げてるのかは問題だよね。相手に委ねてそれでいいって覚悟があるのか。そうじゃなくて、そうとしかとれないという風に伝えたいなら、もっと表現の仕方があるよね。考えなきゃいけない」
ゆ「俳句が短い理由として、詠み手も読者も共通の目線、感動点というものを持ってる。みんなそれぞれのバックグラウンドがあって、海に近い人は海に寄せて、都会の人は都会を詠んで、家族のある人は家族を詠む。それが俳句に広がりというものを持たせる。だから感動点は伝わるけれども、いまの若い人は言いすぎるんだよね。俺はこれを悩んでるんだ!ってやられたって僕はいいよそんなの、ってなっちゃう。そうじゃなくて、あ、こういうことで悩んでるのかなぁって想像させる。そうするといい俳句って作れるのかなって思うよ」

七位
笑うあなたに月の額縁  荻島架人
独特ですね、これはどういう意味なんでしょう。
ゆ「これはね、月をバックに相手が立つ。すると相手の後ろに白い光が広がりますよね。そのことを月の額縁って言ったのが斬新と思います」
「私が思ったのは、笑うあなたという近景と、月という遠景が重なって一枚の絵に見えるってことだと思いました。恋をしている相手を見ていて、絵画みたいに思えるときってありますよね。詠み人は『笑うあなた』という存在に恋をしてる人なのかと」
ゆ「非常に優しい、こういう感じのロマンティックな句を作る人なの」
白松「私はまさか荻島さんと思わなかったんですけど、『笑うあなた』っていうのは亡くなった人だと思ったんですよ。最愛の人が逝ってしまった。それで、この光景は、月の光が差し込んで、遺影に当たっているのかなぁと思ってたんですよ。ああでもそれはよろしくないかなと思い、月を額縁に入れて亡くなったあなたにあげようってことなのかなと思い。
亡くなった、ってことが深く頭に入ってきちゃいまして、こんな風に」
平岡「私はこれは作者の願望なんだろうなと思いました。笑うあなたを月の額縁に入れて見てみたい、ってことなんじゃないでしょうか。月を額縁としたのがユニークだと思って
とりました」
玉「これは人によって解釈がかなり違ってくる句ですね。また別の捉え方をしたかたはいらっしゃいますか」
唯「これ私はねぇ『月の額縁にあなたを入れてあげる』っていう風にとったのです」
「これは白松さんの意見を聞いて亡くなった方の句と思ったけれど、言われなければそうはとれないなと思いました」
藤井「うーん。額縁ってどうしても四角いイメージありますからねぇ。どうなんだろう」
「私はね、これは窓越しに月を見て、その前で彼女がにこっと笑ったと。そんな風にね、窓越しに見た句なんじゃないかなと」
唯「四角い額縁に引っ掛かってるみたいだけど、宗教画なんかにはあるよね。彼女がマリア様みたいに見えたのかな。それだったらいいよね」

九位
寒い丘ひとつ越えわが家の灯り  風呂山洋三
佐瀬「特選でとりました。最近年を取ったので、灯りが見えるとほっとするんだよね。雪が降ってる丘を寒い思いをして越えていって、灯りが見えて、ああ、あったかいな〜と思う。そのあったかいな〜て感じがね。いい句だなと思いましたね。」
湯原「冬の風景と温かい灯りの対比ですとか、優しい雰囲気ですとかがよくてとりました。」
野呂「とりました。たぶんとったときは自分も温かさに飢えていたんでしょう。」
吉多「句材としてはありふれてる感じがしないではないけど、あったかい灯りが見えた、
ってことには共感出来ます。ただ、やっぱりありふれてるかな。僕も作ったことあります。
ただ、やっぱり気持ちがよくわかるので頂きました。」
唯「ありふれてるかもしれないけど、非常に詠み手の思いが伝わってきますよね。そして、いま御三方にきちんと伝わってる。作者は喜ぶと思いますよ」
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム テーマ句評 ( No.7 )
日時: 2014/11/26 16:31
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

十位
砂のうえに海がある砂のうえにたつ  さはらこあめ
梶原「特選で頂きました。砂の繰り返しと、海があることで階層になっているイメージがあって、スケールの大きい句だなと思ったのと、砂の上に立つということで、作者がその雄大なスケールの上に存在しようという意志を感じて、面白いなと思いました。」
玉「私も特選でとっております。これは先ず発見があっていいなと思ったんですね。海対陸、と分けて考えるのではなく、砂の上に海があると捉えた。そしてスケールの大きい海というものと自分を等価のものとして置いたところがカッコいいなと。等価だ、と宣言したということと、等価になってやる、という矜持だと思ったんですね。こちら、見た瞬間特選に決めたくらい、好きです」
佐瀬「釣りをやっていますと、海の下は砂なんだと感じます。この観察がいいですね。そして、我々人間は、からだの中に海を持っているのだと。そういうことも考えさせられて、いいと思います。」
吉多「これは理屈じゃなくて砂の上に立った時の実感だと思いますね。これは頭で作る句ではないと思う。砂の上に〜って一見論理的だけど、実際に立って見て、ポンポンポンと浮かんだものだと思う。分かる、うわーっと思ってとりました」
ゆ「海ってものは非常に大きくて、人間は小さくて、その中に慄然として立つということは、頑張ろうって気持ちを感じるんですね。そして自分も海のように砂の上に立つっていうところを、こういう表現は僕は出来ないので、凄いって思っています」
夏石「砂の上に海がある、って僕の中では二通りの意味にとれて、横から見て、砂丘の上に海があるっていう断面図みたいなものなのか、それとも砂の上に海がずーっと広がっているのか。皆さんどちらでお考えでしょうか」
ゆ「海の下に砂がある、じゃ普通ですよね。そこを、砂の上に海がある、自分も砂の上に立つ、ってことで海と同化して、絶え間なく生きていかなきゃいけないっていう、そういう、ちょっとさびしい孤独感もありながら、屹立している、ということで、僕はよいと思います」
「人の選聞いてると凄いいい句に思えてきたなぁ。でもなんでとらなかったのかっていうと、リズム感だよね。気になってしまって」
田中「これはねどっちも『うえ』って仮名なのがねぇ。どっちか漢字にした方がよかったかもしれない。字面の感じの話だけどね」
藤井「何故かすっと入ってこない。何でかな……」
唯「これはね、さっきの桜貝の句と一緒でね、僕はね、これは潮が満ちてきて、潮が引いて行って、作者はその砂の上に立っているってそんな風にとったわけ。そうすると理屈っぽいなーと思ってね。」
「私は言いたいことが分からなかった。とんとんとんと最後まできちゃってね。立ってる、
生きてるってことが言いたいんなら、さっきの仮名と漢字の話でいうと弱いよね」
田中「抑揚がなくてフラットだよね」
「そうかな、やっぱり俺はいい句だと思うよ。」
「でもやっぱり伝わりにくいよね。句意をしっかり伝えるところまではきていないような気がする」
「でも若い二人が特選にとってるってことは、こういう句が望まれてるってことなんじゃないの。こういう方向に動いていくのかもしれないよね」
「私は俳句にするのなら『海がある』の部分をもっと推敲して欲しい。これは説明になっちゃっていると思う。砂と海がくっついてるのも気になる。論理的に作ろうとした跡が見えている。」
夏石「これは海外の詩人に多い描き方だなと思います。ほとんど綺麗に翻訳出来てしまう。
『砂の上に立つ』、これはどうとらえるか。これは俳句というよりも近現代の詩、そういう描き方をしているのかなと思いますね。僕はこの句はいいと思います。旧来の俳句の見方でいうと、物足りないって思われてしまうのかなと思いました。その亀裂を感じさせる句でしたね。うん、僕はいいと思います」

十位
古書店で背中合わせのじいじとばあば   岡捷代
藤井「じいじとばあばという言い方をしたので孫の視点なのかなと。古書店で好き勝手選
んでいる二人で、でも背中合わせなんですね。絆みたいなものを感じますね。あったかいな〜と思ってとりました。」
玉「あれっ藤井さんの見解ではこれは客ということですね。私は店番してるじいさんばあさんかと思って。むしろ仲悪いのかなと思ったんですけど」
一同「それはないだろう(笑)(笑)(笑)」
「いや、私は店の人と思いましたよ。いつもはどちらかが店番してるじいさんばあさんで、
今日は棚の整理をしているとか、開店の準備をしているとかで背中合わせでせっせと仕事
してる、みたいな」
玉「意見分かれますね〜」
藤井「お年寄りの句にしては結構面白いなと」
玉「何かめちゃくちゃ失礼なこと言ってません?」
藤井「ちがいますちがいます(笑) お年寄りを描いた句として面白いってことです。お年寄りを描いた句はこんなふうみたいな決まった感じあると思うんですが、これはちょっと外れていて面白いなと」
「これどっちなんだろ」
「いやー店番だったらそう書くでしょう。だからこれはお客さんと思います」
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム 気になる句 ( No.8 )
日時: 2014/11/26 16:33
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

【気になる句ー雑詠句部門より】
田中耕司
当日は、得票上位の作品について取り上げられたがそれ以外の作品について私なりの考えを書いていこうと思う。まず次点句から見ていくと、何故次点だったのかそして、これからの自由律に何が必要なのかが、見えてくるかもしれない。
春がいっぱい欲しいふかーい溜息鬼頭富子
タイショクという職を得た日の桜と青い空中塚唯人
寝転んだスマホに春の雲が流れるちばつゆこ
この三作品は、鬼頭作が特選二名、並選が三名、
中塚・ちば作が特選一名、並選五名と言う内訳になっている。賛成者だけを見れば中塚・ちば作の方が多いのだが、特選が同点にしている。
七ポイントで次点になっているのは何処に上位の作品との違いがあるのかを考えてみよう。
わずかに一ポイントだからほとんど差はないのだろうが、その一ポイントが何故足りないのかを考えるのも大事なのだと思う。鬼頭作品に思うのは、春がいっぱい欲しいと一気に読めた人は直ぐに賛成できたのだろうが、私はいっぱいと欲しいがどうも解りにくかった。
中塚作品には、「という」このフレーズがあまりうまく働いていないような感じがする。こ
のように持って回った言い方にしたために、退職に対する作者の気持ちが上手く伝わらないように感じた。それほど深刻な気分ではないのはわかったが。
ちば作品は、寝転んだをどう解釈するかで評価が分かれるのだと思うが、賛成した人たちは自分に置き換えて理解できたのだろう。私は、スマホどころか携帯でさえメールと通話が精一杯なので良く解らなかったのです。
春の鼓動船ポンポンと湖の道  渥美ゆかり
青蛙お前はやはり人間不信か  黒瀬文子
寝袋の中は若者でしょう花見陣取る  上塚功子
墓参りいぬふぐり空の色  岩谷照子
舌を抜かれ損なって今  白松いちろう

次は六ポイントの作品、渥美作品は特選二名、黒瀬、上塚、岩谷作品は特選一名、白松作品は特選が無くても六名の賛成を得ている。
渥美作品の場合、春の鼓動と船のポンポンが近すぎる感じがする。そのあたりが特選とする人がいても賛成が少ない原因ではないかと思う。
黒瀬作品は、お前はの「は」に原因がありそうだ。どうしても続く言葉が説明になってしまうから。
上塚作品は、寝袋まで用意して花見の場所取りをする、日本は平和だなとつくづく思う。若者の位置を工夫したらもう少し賛成が増えるように感じた。
岩谷作品は、これほど素直に一句を作る姿勢は大事にしなければと思わされた。ただいぬふぐりが空の色は本当にたくさんあるので賛成に手を上げられないと言うのが本音かな。この作品を特選とした人に敬意を表します。
白松作品は、最多の六名の賛成を得ている、問題は、一字明けのところが受け入れられるかどうかなのだろう。ちなみに私は、黒瀬、白松作品に賛成をしています。次は五ポイントの作品。
白の色鉛筆落ちている長い階段   藤井雪兎
白いタマシイ舞い狂う菜の花畑知覧  いまきいれ尚夫
あいまいな記憶の底で朝は納豆飯食い  高橋登紀夫
骨箱ぶら下げて大都会を乗り継ぐ   平岡久美子
メモ選り分ける過去と未来と   そねだゆ
古里は何もなく赤い鳥居もビルの上  斎藤実
藤井、いまきいれ作品は特選二名、高橋作品は特選一名、平岡、そねだ、斎藤作品は特選なしの五ポイント。
藤井作品は、白の色鉛筆が何を意味するのかを自分なりに理解できた人が特選としたのだろうが、多くの人はそこに迷ってしまったのではないだろうか。
いまきいれ作品は、知覧だから狂うのだと考えられれば特選に選ぶのだろうが、春で狂うのはなと思ってしまうと賛成が遠くなるだろう。
高橋作品は、あいまいな記憶の底が受け入れられると賛成し特選もとなるのだが、結句の「食い」に何か物足りなさを感じてしまったのではないだろうか。
平岡作品は、都会の生活が思われて現代の社会の様々な矛盾のようなものまで思わせているような感じだ。でも骨箱が作者に特別な意図があるような感じでかえって解りずらかった。
そねだ作品は、日常の生活が垣間見えるような感じでいい感じだが、よく季が無いねと言われていたころを思い出してしまった。上手い具合に季感を出せたらと思う私が古いのかな。
斎藤作品は、古里と言ってもビルの上に神社を置いているのだからかなりの都会なのだろ
う。でもそこは、作者にとって古里としての思い出を失ってしまった町になってしまっている。そんなふうに考えた方がよさそうだ。取り上げられなかった人たちには申し訳ない
と思うのだが、最期に賛成一人、でも特選と言う作品がいくつかあったので紹介してみたいと思う。
頭が骨粗鬆症もう長くはない   島田茶々
正木土昜さん一人が賛成で特選に選んでいます、正木さんのように可笑しみまで感じられないのは年齢層が高いからかな。身につまされて賛成する余裕がないのかもしれない。
屋根で雀春の光と遊んでいる  佐瀬広隆
荻島さん一人が賛成で特選に選んでいます。
この作品は、雀と春の光の位置関係があまりうまくいっていないのではないかと思う。賛成が少ない原因はおそらくそこではないかな。荻島さんのように素直に感じ取れなくなっている自分が情けなくなってきます。
散り始めたむらさきもくれんリバーシブル  田中耕司
吉川さん一人が賛成で特選。このように感じてくれれば何も言うことはありません。
わたしは、このような選句をするとき特選と並選の区別はしていませんが今回のように一人だけの賛成で特選となると、やはり特選の意味を考え直すべきなのかと思いました。そして、見逃した作品や、感想を読んで自分の読みが作者の意図から外れてしまっているのを思い知らされたり、まだまだ句作は奥が深いと思わされています。
メンテ
第13回自由律俳句フォーラム テーマ春の風評 ( No.9 )
日時: 2014/11/26 16:37
名前:   <y_soneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or,jp

【テーマ句―春の風・句会】
披講 梶原由紀
フォーラム後半は、テーマ「春の風」へ投句された句を扱った。テーマは春の風であるが、
句会当日は活発に発言が飛び交い、初夏にふさわしい明るい会となった。

大賞句
春風のめくったページから読む   藤井雪兎
春風の茫洋としたイメージを、効果的に表していると好評だった。
句集・詩集・雑誌……など、どのようなものを読んでいるかについて、様々な予想が飛び交った。「読む」に対しては、本当は読んでいないのではという声も。
特選七人を含む三十二点。二位以下と十点以上の差をつけての一位である。

第二位
春の風優しいだけでいればよかった   正木土昜
「優しいだけでいればよかった」の婉曲や、音の美しさを評価する声が出された。
春の風に対しては、穏やかな春の風と捉える人もいれば、春一番や春の低気圧と捉える人も居り、鑑賞者により解釈が分かれていた。

特選三人を含む十九点。
第三位
接ぎ木して支え合う余生の風光る   吉原陽子
熟年の夫婦の姿と接ぎ木が、支え合って生きているという印象を与えるとの声。また、成長した時に思いをはせる意見も。

特選三人を含む十四点。
その他の上位句より
麻痺の手でしっかり掴む春の風   平岡久美子
句の中の前向きな姿勢に感動する声が上がった。
春の風については希望や回復の象徴であり、掴むことで喜びを得ているのではないかとの解釈がなされた。
特選二人を含む十四点。特選数が三位に一人及ばず、惜しくも受賞を逃した。
新婚の荷を展く座敷に春の風ひかり   紺良造
新婚の夫婦が荷物に風を通す情景が、春の風によく合うという意見が出された。
一方で「ひかり」については、過剰ではないかとの指摘も。

特選三人を含む十一点。
桜散る道の生きている人たち  さはらこあめ
道を生涯に重ね合わせる意見が多く出された。
生きる上では、桜に象徴されるような滅びの姿を見なくてはならないという声も上がった。
特選二人を含む七点。
腹の足しにはならないがサクラサク
鈴木和枝
無条件に桜を受け入れる日本人の姿勢を感じるとの意見が上がった。
鑑賞において、春の風を感じるか否かで意見が割れた。
特選二人を含む九点。
ばらばらに飛ばされちゃうんだ春の風  若木はるか
「ちゃうんだ」が効いているとの声が多く上がった。
作者の心情を春の風に託しているのではないかとの感想もあった。
特選二人を含む七点。


【気になる句テーマ(春の風)部門から】
そねだゆ
定型ではないので、自由に発想を飛び立たせていいはずです。
その眼差しでのいい句を選んでみました。
風にとろり甘い春の一声
佐瀬広隆
これは見事な発想で、作者が分かったときに、うれしくも刮目した次第です。
春のなぜか気だるい空気の波打つような動きが、的確に表現されて見事です。

薄紅桜が風を起こし芭蕉の唇を動かす   白松いちろう
これも作者を知って驚き桃の木桜の木でした。風雅のまことを句にした芭蕉が浮かびま
す。

春風スイと吹き何でも許せてしまう   ちばつゆこ
春風に気持ちが浮いて、寛容の風がすべて
を覆いましたね。さすが旨いです。

酒くさい風が舞う上野公園まさに春   湯原幸三
座句の「まさに春」がなければ選んでいました。そうすれば春を出さなくても、春の風を匂わせる方が、はるかに俳句性が出るはずと思って、惜しかったです。

錆付いた青春が風にきしむ音わたしの春  吉多紀彦
座句の「わたしの春」がなくても充分読めて素敵な句で、惜しく思います。
桜散る道の生きている人たち   さはらこあめ
風を出さないで、春風の残酷性を表現しています。眼差しが非凡。
花見する犬の背にも桜ふぶき   島田茶々
私は、桜がいっせいに散るときに春を意識します。日本画にして「春の風」と名付けた
い句です。
彼岸には菜の花ろうそくと共にゆれ  森命
花がろうそくの火と揺れていると言うのはまさに春の風です。春のポイントを旨くつか
んでいて、さすがです。
一面の菜の花を被う緋の嵐   黒瀬文子
菜の花は黄色と言いたいところを黄砂の緋
色の嵐と視点をずらしたところがさすがです。
メンテ

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